秋人が吉田さんに取り合ってくれたおかげで、フォトスペースの近くに薔薇を準備するスペースをもらうことができた。
しかしどうしても、ひとりで準備するのは難しいので、少しの時間、先輩方に手伝ってもらうことにした。
ある程度の薔薇が用意できたので、ここからは自分一人でできると告げる。
「結愛ちゃん、本当にここまでで大丈夫?」
「はい! お休みなのに、無理を聞いてくださってありがとうございます。一輪は私からお客さんに手渡ししますので」
そう先輩方に断りを入れると、納得して帰ってくれた。
「すごい人だなぁ……」
衝立から顔を出してすぐ、つい独り言ちる。
バレンタインフェアの初日ということで、チョコを求めて大勢の女性がイベント会場に訪れていた。
すると友達らしき女性ふたりが、フォトスペースに立ち寄ってくれた。
さっそく完成した薔薇を持ち、彼女たちのもとに駆け寄る。
「よかったら、薔薇の花といっしょに撮りませんか? 撮り終わったらお花はお持ち帰り頂いても構いません」
「えっ、いいんですか? こんなきれいな花」

