秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています


「そっ、そうだったんだ……本当にごめんなさい……」

素敵な薔薇を使うことはもうない。

オブジェに使う薔薇が足りなさそうではあったのだが、市場で間に合わせることができたのだ。

「結愛が謝ることじゃない。もし必要であれば、すぐに用意できると伝えたかった」

「何色なの?」

「赤い薔薇だよ」

秋人は優しく説明してくれる。

勿体ないな……せっかくの赤い薔薇を、どうにか生かせることはできないかな……。

完成した美しいオブジェを眺めながら、あれこれと考えを巡らせる。

するとふと、ある案を思いついた。

「じゃあ、写真を撮ってくれたお客さんに、薔薇の花を一輪プレゼントするのはどうかな?」

バレンタインに、愛を伝える赤い薔薇はぴったり。

最低限の簡易的な包装なら、今現場に残っている道具でも十分できそうだ。

すると秋人は私の提案に、うんうんと満足げに頷いてくれる。

「それはいい考えだ。写真映えもするだろうし……」

「かな? ねぇ秋人、簡易的な衝立(ついたて)を貸してもらえると嬉しいんだけど。少しスペースを頂ければ、そこで薔薇の準備ができるし」

「分かった。吉田に聞いてみるよ」