そして営業時間の午前十時がやってきた。
ほぼすべての作業が終わり、店長がオブジェに最後の花を取り付ける。
その瞬間、大きな歓喜の声が上がった。
「終わった……! なんとか間に合った!」
近くにいた先輩方とハイタッチをして、すぐに撤収の準備に取り掛かる。
まだ開店時間直後で、七階までお客さんは来ていない。
よかった、本当によかった……!!
絶対に間に合わないと絶望したけれど、諦めなくて本当によかった。
全員が全力で頑張ったから成し遂げられたのだ。
そして、何より秋人が私に頑張る勇気をくれたから……。
胸が熱くなっているのを感じていると、後ろから「結愛!」と名前を呼ばれる。
「秋人……!」
「間に合ったのか……あぁ、よかった」
息を切らした秋人が、安心しきった表情でやわらかく微笑んでいる。
「うん、本当にありがとう。葛城堂の人たちも、すごく頑張ってくれた。感謝してる」
秋人は私の言葉にうなずくと、躊躇いがちに口を開く。
「実はChiara Flaubertからさっき、大量の薔薇が届いたんだが、必要ないか?」

