「えっ……」
思わず作業の手を止めると、隣にいた香川さんが茶化すような表情で肘で小突いてくる。
秋人と思いを遂げてからというもの……。
彼は人目もはばからず、仕事の合間を見て私に会いに来るようになった。
そのため、今までただの知り合いと言い張っていたけれど、もう諦めて、秋人と付き合い始めたとみんなに公言したのだ。
そしてあやめの父親だということも。
「そうですね。明後日のオープン前に、関係者の方にお披露目に回るとは言っていました。葛城堂のバレンタインイベントは有名ですからね」
「そうなんだぁ、彼氏は結愛ちゃんに会いたくて仕方がないと思うよぉ~、会えるといいね!」
「ははは……」
秋人が私を溺愛していることも、何故かバレバレだ。
大きなイベントの依頼や、私の生け込みの個人指名などを見て、みんなはそう察したのかもしれない。
やっぱり照れてしまうけれど、彼は未来の旦那さまだ。
この幸せな羞恥心に、私が一刻も早く慣れなければ……。
それからは必死で、作業を全うした。
本館七階のフォトスペースの設置をなんとか一日で終らせ、翌日は西館の連絡通路一帯の飾りつけに取り掛かる。
ハートのオブジェを門のように設置し、通路のサイド部分を花畑のように見せる演出を行ってゆく。
薔薇と菊の花を枠に設置していると、ツンと鼻を突く香水の人工的な匂いが漂ってきた。
「瀬名さん、お久しぶりねぇ。まさかこんなところで会えるなんて!」

