再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~

「沙月は俺のことをどのくらい知っている?」
「どのくらいって・・・」

付き合っていてそういう関係になった以上私しか知らないことは多くあるように思うけれど、何を尋ねられているのかがわからないと答えようがない。

「僕が三朝財閥の長男で、いずれは三朝コンツェルンを継承する人間だと思われているのは」
「当然知っています。今はMISASAの副社長で、近いうちに社長となり、三朝コンツェルンの総帥になる予定だと理解しています」

そんな尊人さんの側にいるとこが苦しくて私は逃げ出してしまったんだから、知らないはずがない。

「じゅあ、弟がいるのは知っている?」
「ええ、三朝建設の勇人社長ですよね」

直接の面識はないけれど、奥様はコットンハウスの常連で何度もお話をしたことがある。
そう言えば、以前は勇人社長の奥様が尊人さんの秘書をしていたって聞いた。

「実は、俺と勇人は兄弟ではなくて従弟なんだ」
「え、えっと・・・」
どういう意味だろう。

「俺の実の父親は、現総帥である父の兄なんだよ。もともとは父親が三朝コンツェルンを引き継ぐはずだったが俺が3歳とき病気で亡くなって、弟だった今の父が三朝コンツェルンを引き継いだ。その時俺も養子として父のもとにやって来たってわけ。母親も俺を出産するとすぐに亡くなっていて、他に身寄りもなかった俺を今の両親が育ててくれたんだ」
「そうだったんですね」

元カノなんて言いながら、私は尊人さんのことを何も知らなかったらしい。
私はそのことにショックを受けた。