「ここが自宅ですか」
シャワーから出て、改めて部屋を眺めながら漏れた一言。

「ああ。今年の春に日本へ帰ってきたところだからあまり物はないんだ。何しろ寝に帰るだけだしね」

場所は都心。
乗ってきたエレベータは最上階を表示していたし、見えている窓からの景色からしてかなりの高層階。
マンションの一階にはフロントがありコンシェルジュが常駐しているようだったし、部屋に至るまでの通路も重厚でシックな空間だった。
それに、何よりも部屋の大きさ。
きっと通されたのはリビングなんだろうけれど、とにかく広い。
大きなソファーセットとテーブルが置いてあるものの、それを避けてでも凛人が駆けまわれるくらいの空間がある。
そして壁の一面は大きな窓になっていて、東京の街並みが一望できる。
ここは相当高級なマンションだろう。

「すごいですね」
圧倒され過ぎて、そんな言葉しか出てこない。

寝に帰るだけだと尊人さんが言うように、物が少ないせいかあまり生活感はない。
きっと家事代行サービスがお掃除に来ているのだろう、散らかった様子も汚れもない。
そのせいとは言わないけれど、部屋はとってもおしゃれでまるで雑誌から出てきたような雰囲気だ。