再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~

食事の後、ソファーで向かい合った俺たちは、互いを『尊人さん』『沙月ちゃん』と呼びあうことにした。

「まだ若そうなのに、沙月ちゃんはお見合い肯定派なのか?」
「別に肯定派ってこともないですが・・・」

でもお見合い結婚を否定はしないと、彼女は言っているようだった。

「結婚は好きな人と恋に落ちてとか思わないの?」
若い女の子なら恋愛結婚をしたいって、思いそうなものなのに。

「そうですね。人は変わるものだし、一時の感情で突っ走って後々後悔したくはありませんから」

どうやら彼女にもなんだかの事情があるんだとこの時感じた。
それでも、

「人を好きになるって、理屈じゃなくて本能なんだけれどね。沙月ちゃんにはまだわからないか」
まだ若いものなの思いを込めると、
「ええ、わかりません。だったらわかるように教えてください」
挑発的に返ってきた言葉。

「本気で言っている?」
「ええ」

間違ってもそんなつもりでここに連れてきたわけではない。
今までにだって、素性もわからないまま一夜の関係を持った女性はいなかった。
やはり、この日の俺はどうかしていた。

「悪いけれど、俺も今日はそんなに紳士ではないんだ。色々と嫌なことがあって優しくしてやれないと思う。それでもいいのか?」

これは最後の確認。
言いながら自分自身に本当にいいのかと聞いていた。

「逃げ出すなら今だぞ」
この先に進めばもう後には戻れない。
それでも、
「いいえ」
彼女は逃げ出さないと答えた。

その思いは俺も一緒だった。