「大丈夫だよ凛人、一緒に遊ぼうな」
「はーい」

徹はいつも凛人に優しい。
医大生とはいえ昨年まで学生だった徹は、これまでもことあるごとに凛人の世話をしてくれた。
そのせいもあって凛人も徹に懐いてしまっている。
この春からは滅多に会えなくなってしまい一番寂しがっているのは凛人だろう。

「さあ凛人の好きなクッキーを焼いたからお茶にしましょう」
「はーい」
おばあちゃんが作るお菓子が大好きな凛人は母の声に誘われて駆け出して行った。

それにしても大きくなったなあ。
ついこの間まで抱っこしていたのに、今は自分でどこにでも行ってしまう。
その分目が離せないけれど、おかげで育児はかなり楽になった。

そもそもこうして凛人が育てられるのは母と徹のお陰。
シングルマザーとして1人で育てますなんて偉そうなことは言っても、働きながらの子育てはそう簡単ではない。
子供が小さいうちは病気になることもあるし、急なお熱のや体調不良のたびに仕事を休んでいればさすがに会社にだっていづらくなる。そうやって仕事を辞めたりパートになっていくママたちをたくさん見てきた。
私だって、母と徹がいなかったら同じだったと思う。