「まま、おはよう」
「おはよう凛人(りんと)

朝7時。
グズルことなく1人で起きてきた息子を、私はギュッと抱きしめた。

「もうすぐご飯できるから待っていてね」

大きくて二重の目と存在感のある唇が私にそっくりな息子。
でも、色白でスッと通った鼻筋と茶色のくせ毛は彼に似ている。
彼を知る人が見れば、『よく似ているね』と言われてしまうだろうと思うほど、面影がある。

「まま、けーきは?」
朝食の卵を焼いている私の隣で、冷蔵庫を覗き込んでいる凛人。

「えー、ケーキがいいの?」

決して食が細いわけではないけれど、三度の食事はきちんと食べて欲しいと思っている私はケーキで朝食を終わらせるのには賛成できない。
せめて少しでも食事をとってほしいのだけれど・・・

「りんとのおだんじょうけーき」

どうやら、どうしてもケーキが食べたいらしい。

「はいはい」
仕方ない。今日は特別だものね。

私は冷蔵庫の奥にしまっていたケーキを取り出すと、凛人のお皿に移してやった。