優しい彼のことだから、私がどうしてもと言えばきっとうなずいてくれるだろうと思ってはいた。
そうなる状況を作ってしまったのも私自身だし納得してもらわないと困ったけれど、思いのほかすんなり受け入れられて拍子抜けした。
私はきっと、心のどこかで別れたくないと言ってもらうことを望んでいた。
「沙月は本当にそれでいいんだな?」
確認するように目線をそらすことなく問われると胸が苦しくなって、
「ええ」
短い返事を返すのがやっと。
知り合ってからほんの数ヶ月。
色々な偶然が重なり体を重ねる関係にはなったけれど、こうなったことに後悔はない。
私は彼のことが好きだった。いや、今でも大好きだ。
だからこそ、これ以上未来ある彼のそばにいるべきではないと感じた。
別れ際、
「俺は沙月のことが好きだ。だから、何かあればいつでも俺を頼ってほしい」
歩き出そうとした私の背中にかけられた言葉に駆け寄りたい衝動にかられながら、それでも私は前へと歩を進めた。
この決断は私の意志。
だから振り返ってはいけない。
この時の私は、もう二度と彼に会うことは無いと心に決めていた。
******
ブブブ ブブブ ブブブ。
いつものように鳴ったスマホ。
隣に眠る息子を起こさないようにアラームを切って、私はベットを出た。
もう5年近くも経つのに、ことあるごとに彼の夢を見る。
それが未練なのか、後悔なのか、私にもわからない。
ただ言えるのは、彼はもう過去の人。時間をかけてでも忘れるしかないのだ。
そうなる状況を作ってしまったのも私自身だし納得してもらわないと困ったけれど、思いのほかすんなり受け入れられて拍子抜けした。
私はきっと、心のどこかで別れたくないと言ってもらうことを望んでいた。
「沙月は本当にそれでいいんだな?」
確認するように目線をそらすことなく問われると胸が苦しくなって、
「ええ」
短い返事を返すのがやっと。
知り合ってからほんの数ヶ月。
色々な偶然が重なり体を重ねる関係にはなったけれど、こうなったことに後悔はない。
私は彼のことが好きだった。いや、今でも大好きだ。
だからこそ、これ以上未来ある彼のそばにいるべきではないと感じた。
別れ際、
「俺は沙月のことが好きだ。だから、何かあればいつでも俺を頼ってほしい」
歩き出そうとした私の背中にかけられた言葉に駆け寄りたい衝動にかられながら、それでも私は前へと歩を進めた。
この決断は私の意志。
だから振り返ってはいけない。
この時の私は、もう二度と彼に会うことは無いと心に決めていた。
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ブブブ ブブブ ブブブ。
いつものように鳴ったスマホ。
隣に眠る息子を起こさないようにアラームを切って、私はベットを出た。
もう5年近くも経つのに、ことあるごとに彼の夢を見る。
それが未練なのか、後悔なのか、私にもわからない。
ただ言えるのは、彼はもう過去の人。時間をかけてでも忘れるしかないのだ。