「きっと、俺は三朝家を継ぎ三朝コンツェルンを継承することになるだろう。そうなれば沙月にだって負担をかけることが出てくると思う、それでも沙月は俺について来てくれるか?」

ちょうど車がマンションの地下駐車場に入ったタイミングで、エンジンを切り運転席の尊人が心配そうに私を見た。

「尊人と共に生きたいです」
私ははっきりと答えた。

もちろん、私に不安な気持ちがないと言えば嘘になる。
それでも尊人が好きだし、尊人以外の相手は考えられない。

「ありがとう」

次の瞬間ギュッ抱きしめられ、すぐに唇が重なった。
柔らかくて温かな温もりが私の中へと侵入する。
人間て不思議なもので、5年も経つのに触れた瞬間に当時の感覚を思い出した。
頭で覚えていた以上に、体が尊人を記憶していたらしい。

「ヤバイ、止まらない」
「もう、尊人ったら」
クスッと笑ってから、私は尊人を押し戻した。

「ごめん、続きはまた改めてだな」
「ええ」
さすがにもう止めようとは思わない。

「忘れるなよ」
ニヤリと笑う尊人は、私だけが知る意地悪い顔をしていた。