再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~

「徹、こちら三朝尊人さん。今勤務している会社の上司の方」

「どうも」
とっても不満そうに、ぺこりと頭を下げる徹。

「えっと、彼は・・・」

困ったぞ。
徹のことをどう紹介しても問題がある気がするのだが・・・

「佐山徹です」
私が黙ってしまったのを見て、徹の方が名乗ってしまった。
そして、

「え、佐山、さん?」
尊人がポカンと口を開ける。

「ええ、佐山沙月の弟です」

あーあ、言ってしまった。
私が嘘をついているなんて知らない徹だから仕方がないけれど、すごくマズイ。

「えっと、あなたは沙月の弟さん、ですか?」
「ええ」
「実の?」
「ええ、もちろん」
おかしそうに徹が笑っている。

「とーちゃん、だっこ」
それまでいい子で尊人の膝に座っていた凛人が、徹に向けて手を差し出した。

「とーちゃん?」
尊人は凛人と徹を交互に見る。

「僕の名前が徹なので、『とおるちゃん』を略して『とーちゃん』です」
「ああ、なるほど」
って言いながら、尊人は全然なるほどって顔をしていない。