再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~

車を飛ばしてやってきた沙月のアパート。
以前、子供の病院の帰りにここまで送って来たからアパートの場所はわかっていた。
築年数こそ新しいがごくごくありふれた2階建てアパートの、部屋は1階角部屋。
不用心だからせめて2階の方がいいんじゃないかと言ってはみたが、子供が足音を気にせずいられる方がいいからと聞き入れてはもらえなかった。
恋人が医者ならもう少しいいところに住めばいいのにな。
そんな事を思う俺も俗物なのだろうか。
沙月のことだから、恋人には頼らず自分で暮らしているんだろう。
それがまた沙月らしくもあるが、俺なら我慢できないな。

近くの駐車場に車を止め、俺は沙月のアパートに向かった。

勢いでここまで来てしまったが、アパートに恋人がいたら俺はどうするんだろう。
沙月と恋人と子供と3人の仲のいい様子を見せられたら、しばらく立ち直れない気がする。
それでも、

「よしっ、行こう」

もう逃げないと決めたんだ。
どんなことがあっても、沙月を振り向かせる。
2度と彼女を失いたくはない。

自分で自分を奮い立たせながらアパートの通路を進み、沙月の部屋が見えてきたとき、
「え、嘘だろ」
俺はその場で固まった。