「ああそうだ、これを」

実家の近くまで尊人さんに送ってもらい、車を降りる時に差し出された紙袋。

「何ですか?」
随分重そうだけれど。

「絵本だよ。こう見えて小さい頃の俺は絵本が好きでね、そのころ読んでいたものと同じものを取り寄せてもらったんだ。よかったらお子さんのお土産に」

私は紙袋を持ったまま尊人さんを見つめた。
まさか尊人さんがそんな気遣いをしてくれるとは思っていなかったし、そもそも凛人のことを気にかけてくれていることに驚いた。

「もちろん気に入らなければ捨ててもらっていいから」
「そんな・・・ありがとうございます」

凛人はまだ字を読むことはできないけれど、絵本は大好きだからきっと喜ぶと思う。
親子とは名乗れないまでも、パパが好きだった本だよっていつか教えてあげよう。
凛人だってきっと喜んでくれるはずだわ。

「じゃあ、また来週」
「はい、お疲れさまでした」

ペコリと頭を下げ、走り去っていく車を見送りながら、いつまで尊人さんに嘘をつき続けられるのだろうと私は不安になっていた。