「こんな話をすると、何をバカなって思うよな。でも、俺は本気だ。だから、親父の望むような結婚はしたくない。結婚して家庭を持てば逃げ出すことはできなくなるからね」
尊人さんはどこまで本気なんだろうと思いながら、私は話を聞いていた。
もし本気で逃げ出すなら、今までだって何度もチャンスはあったはず。
時間が経てばたつだけ職責も重くなって、抜け出せなくなるのに。
まあそれが責任感の強い尊人さんらしくもあるけれど、正直不器用な人だなとも思う。
「5年前、あんなに結婚を嫌がっていたのもそのせいだったんですね」
「ああ、付き合いのある政治家の家との縁談だったからね。会えば断れなくなるのは見えていたし、できれば避けたかった。でも、親父に歯向かうだけの根性もなかったってわけだ。情けないだろ」
「そんな・・・」
情けなくはないけれど、きっと尊人さんが優しい人だからだろうな。
「今もまた縁談を押し付けられそうになっているんだが、簡単には断れなくてね」
「それは、大変ですね」
「こらっ」
お金持ちの家も苦労が多いんですねと相槌を打った私の頬を、人差し指でツンと突かれた。
「なに?」
私何か悪いことを言っただろうか。
「あの時沙月が俺のもとを去らなければ、今も縁談に悩まされることはなかったんだぞ」
「それは・・・」
ある意味言いがかり。
私だって、悩みに悩んで出した結果だった。
尊人さんはどこまで本気なんだろうと思いながら、私は話を聞いていた。
もし本気で逃げ出すなら、今までだって何度もチャンスはあったはず。
時間が経てばたつだけ職責も重くなって、抜け出せなくなるのに。
まあそれが責任感の強い尊人さんらしくもあるけれど、正直不器用な人だなとも思う。
「5年前、あんなに結婚を嫌がっていたのもそのせいだったんですね」
「ああ、付き合いのある政治家の家との縁談だったからね。会えば断れなくなるのは見えていたし、できれば避けたかった。でも、親父に歯向かうだけの根性もなかったってわけだ。情けないだろ」
「そんな・・・」
情けなくはないけれど、きっと尊人さんが優しい人だからだろうな。
「今もまた縁談を押し付けられそうになっているんだが、簡単には断れなくてね」
「それは、大変ですね」
「こらっ」
お金持ちの家も苦労が多いんですねと相槌を打った私の頬を、人差し指でツンと突かれた。
「なに?」
私何か悪いことを言っただろうか。
「あの時沙月が俺のもとを去らなければ、今も縁談に悩まされることはなかったんだぞ」
「それは・・・」
ある意味言いがかり。
私だって、悩みに悩んで出した結果だった。



