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 ──カチカチカチカチ。

 午後五時を前にし、アランが暮らす屋敷の中では、カールが一人キッチンに立っていた。

 今から、アラン様の夕食を作ろうと、冷蔵庫をあけたカール。だが、そんなカールの元に、シャルロッテがやってきた。

「カール!」

「ん? どうした、シャルロッテ」

「それが、レイヴァンが、まだ戻ってこないの。少し嫌な予感がするわ」

 不安げな表情を浮かべるシャルロッテ。それを見て、カールは、ふと時刻を確認する。

 確かに、帰って来るのが遅い。
 カールは、慰めるように微笑むと

「わかった。お前のカンはよく当たるからな。少し外を見てくるよ」

 そういって、シャルロッテの頭をポンと撫でたカールは、その後、玄関に移動する。

「気を付けてね。あなたに何かあったら、アラン様が悲しむわ」

「分かってる。お前は、アラン様の傍に」

「えぇ」

 二人は、少しだけ話をしたあと、玄関の扉をあけた。

 だが、その瞬間、玄関先にいた人物を見て、二人は目を見開いた。

「……ハヤトくん?」

 顔を青くし、立ち尽くす颯斗《はやと》をみて、シャルロッテとカールが、颯斗に近寄り、その顔を覗きんだ。

 だが、その瞬間

 ──バチッ!

 と、電気のような刺激が二人に走る。

 見れば、颯斗は、シャルロッテとカールに黒い紙を貼りつけていて、そして、その黒い紙は、あっという間に二人を人形の姿に戻し、動かなくなったシャルロッテとカールが、パサッと颯斗の足元に落ちる。

 すると、それを見て、颯斗は、ドサッとその場に座り込むと

「ッ……ごめん……ごめ、ん……っ」

 そう言って、何度と謝る颯斗の瞳には、今にも溢れそうなほど、涙がたまっていた。