シャルロッテさんは、笑っていた。

 すごく悲しそうに。
 だけど、どこか嬉しそうに。

 まるで、アランのことを大切に思う、お母さんみたいに。

(アラン、友達がいなかったんだ)

 その話を聞いて、すごく悲しい気持ちになった。

 なんでも、持っている子だと思ってた。

 魔王の息子だし、王子様だし、俺にはない自信だって持ってるし、だけど本当は、ひとりで、寂しかったのかな?

 だから、アランは、カールさんとシャルロッテさんに、命を与えたのかな?

 でも、そんな家族のように大切にしてきた二人を、魔王(お父さん)に壊されそうになって、アランは、家出してきたんだ。

「ごめんね、ハヤト。こんなことに巻き込んでしまって……ハヤトにとっては、迷惑なはなしでしかないわね」

「え!? 迷惑だなんて思ってないよ! それに、俺もずっと、アランと友達になりたいと思ってた!」

「え?」

「俺にとっても、初めてなんだ。同じ趣味をもつ男の子に会ったの。だから、いつかなくなっちゃう記憶かもしれないけど、それでも今は、アランともっと、色んな話をしてみたい!」
 
 思ったままに気持ちをぶつけると、シャルロッテさんは、さっきとはまた違う、どこかほっとしたような笑顔を浮かべた。

 いつか、忘れてしまうのかもしれない。
 それは、すごく悲しい。

 だけど、それでも、アランと出会ったことは、今の俺にとって、すごく大きなことで──

「土曜日、お化け屋敷まで迎えに行くから、家で待ってろって、アランにいっといて!」

「ふふ……ありがとう。必ず伝えるわ」

 週末に会う約束を取り付けると、その頃には、ずっと続いていたモヤモヤが、もう、すっきりなくなっていた。

 魔界の王子と友達になるなんて、ちょっとおかしいのかもしれない。

 だけど、それでも今は、記憶が消されることなんて忘れて、友達との時間を大事にしようと思った。