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 その後、ひととおり話し終えた頃には、もう6時になっていて、アランが帰ることになった。

「じゃぁ、気をつけて帰れよ」

 玄関先でアランを見送る。するとアランは

「あはは。気をつけろなんていわなくても、大丈夫だよ。僕のこと誰だと思ってんの?」

「まぁ、そうだよな。(魔王の息子だし)」

「ねぇ、それより、次は、うちの屋敷に遊びに来てよ」

「え? うちのって……まさか、あのお化け屋敷にか!?」

「うん! もうすっかり魔力も回復したから、今朝、もっと強力な結界を張り直したんだ。中も綺麗になってるよ」

「そ、そうなんだ……」

 いや、でも、お化け屋敷なのは、かわらないだろ? 大丈夫なのか?

「じゃぁ、またね、ハヤト!」
「え? あ、うん……また」

 すると、アランは、にこやかに笑って手を振って、俺はアランを見送ったあと、玄関に入って、鍵をかけた。

「今、ハヤトって……呼ばれた」

 なんだか、友達みたいに──

「お兄ちゃん!?」
「うわぁぁ、びっくりした!?」

 すると、いきなり夕菜が出てきて、俺は飛び上がった。

「なんだよ、いきなり!」
「なんだよじゃないよ!! お兄ちゃん、さっきの人、誰?!」
「え!?」

 ズイと身を乗り出し、顔を近づけてくる夕菜に、かるく狼狽えた。

 さっきの人って、もしかして、アラン?

「あの人、すっごくかっこよかった! 綺麗だし優しそうだし、まるでアイドルみたい!」

 あー、やっぱり、アランのことか。

 確かに、アランはイケメンだ。銀髪だし、目の色は紫だし、しかも王子だし!(魔界のだけど)

 ていうか、なんで知ってんだ?……とおもったら、さっき部屋から出た時、夕菜とすれ違ったんだった!

「ねーねー、あの人の名前は!」

「え? 名前は、アランで」

「アランくん。もしかして、お兄ちゃんの友達なの!」

「えっ……そ、そう、俺の友達!」

 興味津々に目を輝かせる夕菜に、俺はとっさにそう言ってしまった。

 だけど

(ッ……なに言ってるんだろう。アランは俺のこと、友達とは、思ってないかもしれないのに!)

 自分の言葉に、なんだか急に恥ずかしくなって、俺は夕菜の質問攻めから逃げるように部屋にもどった。

 俺には、友達がたくさんいる。

 ゲームの話する友達もいるし、一緒にサッカーする友達もいる。

 でも、一番好きな物について、あんなふうに語り合える友達はいなかった。

 だから、かもしれない。

 魔王の息子相手に、こんなことを思うのは、おかしいのかもしれないけど、いつか本当に、そう、なれたらいいなって思った。

 アランと、本当に『友達』になれたらって……