(あ、ララ)

 そこには、ララが転がっていた。さっきカラスに襲われた時に、ポケットから落ちたんだ。

 そして、それをみたアランは

「これ、君のぬいぐるみ? もしかして、君、男なのに、こんなに可愛いぬいぐるみ、持ち歩いてるの?」

「……っ」

 瞬間、心臓が痛いくらい音を立てた。

 あぁ、またバカにされる。
 また笑われて、嫌な思いするんだ。

 いやだ。
 もう、あんな思いしたくない。

 言っちゃいけない、本当のことなんて。

 可愛いものが好きことも、裁縫が好きなことも、絶対に……っ

「あぁ、そうだよッ!」

 だけど、そう思う心とは裏腹に、出てきた言葉は、それとは全く違う言葉だった。

「ッそうだよ、俺のだよ! 俺男だけど、ぬいぐるみも好きだし、裁縫も好きだし、可愛いもの集めるのも作るのも、大好きだよッ!」

 もう、頭の中がぐちゃぐちゃだった。

 魔界とか、魔王とか、ヘビ男とか、動く人形とか、もう意味がわからない。

 その上、またバカにされるなんて

「なんでだよ……男が、可愛いもの好きって……そんなにダメなことか……っ」 

 まるで、ため込んだ気持ちが爆発するみたいに、気付けば、声を上げていた。

 目の奥が、熱い。

 もう二度と言わないって決めてたのに、言葉は止まらずにあふれてくる。

 なんで、笑うの?
 なんで、おかしいなんて言うの?

 俺はただ、自分の好きなものを、素直に『好き』って言っただけなのに

「──ダメじゃないよ」

「え?」