ふと気になった。

 魔界の王子様、それも魔王の息子が、わざわざ魔界から逃げ出してくるって、どういうことだろう。

 俺がそう思った時

「……誰?」

 と、声が聞こえた。

 落ち着いた子供の声。みれば、さっきまで眠っていたアランが目を覚ましていて、俺の方をじっと見つめていた。

「あ……」

 目が合うと、日本人とは違う紫色の瞳に釘づけになった。

 宝石みたいな綺麗な色。髪だって銀色でキラキラしてるし、その雰囲気は、まさに王子様だった。

 だけど……

「レイヴァン、おいで」

 と、右手をあげたかと思えば、アランはどこからかカラスを出現させた。

 まるで手品みたいにパッと現れた、大きくて真っ黒なカラス。

 すると、そのカラスは、ギラリと目を光らせ、俺に向かって襲いかかってきた。

「カ──!!」
「うわッ!?」

 大きな羽をばたつかせ、鋭いくちばしでつつかれる。

 とっさに顔をかばっただけど、俺はおされるまま床に尻餅をつくと、そのカラスは、俺が手にしていた男の子の人形をあっさり奪い取って、またアランの元に戻っていった。

「ありがとう、いい子だね」