リクトくんの言葉を遮り、咄嗟に返事をした。


「私は、同じクラスになってから嘘くさいリクトくんの笑顔の裏には何が隠されてるんだろうってずっと気になってた。そんな時に資料室でリクトくんが私に本性をさらけ出してくれて…」

「嫌いになった… か?」


そう言いながら、リクトくんは悲しそうな切なそうな瞳で私を見つめた。


「ううん。むしろ、もっともっとリクトくんの事を知りたくなった。リクトくんがいつか一人の女性を一途に愛する時、どんな感じなんだろうって、それが私だったら良いなとまで思った」


リクトくんは私の言っていることを理解していなのか、理解する気がないのか、固まっていた。


「リクトくん… 好きだよ。だから、ソウヤくんとは付き合わない。そもそも昨日、初めて会ったばっかだしソウヤくんのことは何も知らない」

「そう、なのか?」

「そうだよ。リクトくん、先走りすぎ」


安心したようなリクトくんの表情に私は少し期待を抱いてしまった。

勘違いだって分かってる、だけどそんな顔されたら、勘違いしたくなくてもしちゃうよ。

もしかしたら “両想い” なんじゃないかって……


_____プルルルルルルルッ


私たちの時間を邪魔するかのようにリクトくんのスマホから電話の音が鳴り出した。


「ごめん、ちょっと出てくるわ」


そう言って少し離れた場所で電話を始めたリクトくん。

きっと、また知らない女の子なんだろうな。

私は先程まで抱いていた期待がサーッと消えていくのが分かった。


「分かった、すぐ行く」


リクトくんは電話を切った後、私に申し訳なさそうな顔をしながら 「ごめん」 とだけ言い残して走って行ってしまった。


「やっぱり両想いなわけ、ないよね」


私は気分転換に、いつもと違う道のりで帰って行った。