「ま……まさか、本当に集まるとは………俺は、夢を見てるのか……?」



石のように顔を苦笑いという形で固めている、敬斗くんを横目に家の中で遥の誕生日パーティーが始まった。



元いじめっ子の蓮くん、真央ちゃん、夏目さん、まさかの最初に出会った、警察官まで来てくれたみたいで嬉しい。




理央くんは相変わらず、バイトだって言って、向き合ってはくれなかったけれど。



「しかし……どうやって集めたんだ?お前、理央と仲悪いし、こんな人たちの連絡手段どう取ってたんだ?」



「夏目さんに頼んで、探してもらったんだー。インフルエンサーで、ネットの達人だからねー」




「理央の母さん………なんだかかわいそうになってきた………こんな事情で、巻き込むなんて………お前、反省してんのか?」




「反省する為に、前に進むためにこうやってパーティーを開いてるの!!」




「ほらほらー二人ともー、特製ニューヨーク取り寄せの、チーズケーキよー」




夏目さんに促されるまま、小ぶりのケーキを口に入れられる僕達二人。




「!?って、うまい!!なんだこれは!!」




そうやってチーズケーキの旨さに感激しているタキシード姿の敬斗くんを横目に、直ぐ様遥くんがやって来た。




「有馬お兄さん、楽しんでる?ごめんね理央兄ちゃんが全然来てくれなくて………」




「うん、気にしないで」




「お!!お前か!!敬斗って元悪者は!!俺様と勝負しろ!!」



「痛い!!痛い!!俺に、技をかけるな!!」




せっかくのタキシード姿をしているのに、蓮くんのプロレスごっこにつきあわされる敬斗くん。



不憫だけど、なんだかんだ息が合っていて微笑ましい。



「はいはーい。皆様、遥の誕生日会に来てくださり誠にありがとう。一母親として、とっても嬉しい限りだわ!!」




真っ赤な肩出しドレスに身と包む夏目さん。




その様子を、顔を赤くしながら見ていたあの警察官のおじさんがいた。



しかもニヤけてる………っていうことは、好きだったの!?



「あのおじさんが……パパになるんだとしたら、僕、理央お兄ちゃんと家出したい………」



「………辛いね……ご愁傷さま」




僕は肩を叩いて、遥くんを前に出す。




暫く僕達は、踊りに宴を楽しんだ。



みんな確かに違うのだけど、心は平穏を宿しているせいか打ち解け合うのは早かったみたいでーーー本題に入るのは容易かった。



「ーーーそれでは、皆さん!!有馬が、何か秘密があるようです。発表していただきましょう!!」




僕の正体を明かす時間がやってきたのだ。




僕は皆の前に立つ。



息を吸って、ありとあらゆる魔力を絞り出す。



そして、凄い風が僕を包みーーー。




煙は部屋に充満して、僕はその煙を切る。




そこに現れたのはーーー一メートルはあろう大蛇。



白く美しい鱗を持つ、蛇に姿を変えた。




誕生日会に来たみんなは、息を呑んだ。




「みんな。遥くんの誕生日会なのに、こんな姿に変身して、空気を変えてしまってごめん。でももう、隠すのは辞めて、相談に乗ってほしいんだ。みんなのことを信頼してるから」




そして、事の経緯を話しーーー僕は言った。




ーーーー「理央くんに謝って、今後僕はどうしたらいいのかを」。




「お山の大将の俺様が言うのもなんだけど、素直に謝ってから決めたほうがいいんじゃねえーの?」



「というと?」



「その時に感じた、答えが見えてくるってわけだよ。謝ってもないのに、うじうじ悩んでんじゃねぇーって話だ」



「僕も、蓮くんに賛成だよ。有馬お兄ちゃん、僕がどうにか理央お兄ちゃんに話をつけてみるから、2人で話し合ってみて決めようよ」




「俺も、そうした方が良いとは思う。悪いのはお前だが、理央は分かるやつだから、お前のことを聞き入れてくれるはずだ」




「私も、そうしたほうがいいと思うわ。全力でぶつかってらっしゃい。どんな結末になっても、私は応援してるわ」



みんな………。



「ありがとう……って、どうしてみんな蛇の姿になっても、驚かないの?」



「あぁ、それについては」と、警察官が口を開くと、驚いた。



皆なんと、僕が蛇だった事を初めて会ったときから感づいており、困っているかもしれないときは、助け合ってあげようってーーー。



「敬斗くん以外は、連絡し合ってたってわけ?!夏目さん!!集めてくれたんじゃなくって、前々から、準備してたの!?」




「秘密にしておこうと思ったんだけどね……、ごめんなさいね。許してほしいわ」



「俺は、複雑だな……誘われなかったとは……。まぁ、嫌な予感はしていたが」




そこで、狼狽えているとインターホンが鳴る。



扉を開けたら、そこには理央くんがいた。



「話があるんだろ?俺に」



頷く。



そして不安になって、後ろを振り向く。




皆僕の背中を押すように、笑顔。



「さ、話し合う場所を変えようぜ。2人で」



僕は理央くんに手を引かれたまま、外に出向いてゆく。


夜空の星が、とても綺麗な日だった。