「そんなことって………ある………の?」




「それがあるんだよねー」




頭を掻いて、「あーもう!!どうしたらいいのさ!!」と怒る。




「そんなに記憶から、消されるのが嫌なのなら、天界か地獄に戻るんだな」




「でも……それじゃあ………理央くんに会えなくなっちゃう………それだけは嫌だ!!」



「我儘だなー。他に君を見てくれる存在は、たくさんいるのに」




「初めて好きになった相手を、そんな容易く裏切れるようなものではないんだよ!!」




暫く睨み合って、討論をしていたらーー。



案の定、彼がやってくる。



「ったく、お前ら!!何時だと思ってんだ!!」




僕と白猫が向かい合っているのを、まじまじと見た理央くん。




まずい気がするんだけど…………。




「あ!?あの時の、猫?!」




理央くんは、このロロの事を知っているの!?




「やあ、久しぶりだね」




何処となく、慣れ親しい感じが………もしかして知り合い?



「理央くん、この猫のことを知ってるの?」




「えっと……答えづらいけど………知ってる」




「か……神様と知り合いなんて………理央くんどうしちゃったの?」




「それは俺が聞きたい………」




「まぁ、まぁ、二人とも落ち着いて」





何でこの神様は、いっつも冷静なんだろう。




天界住人が、人間界に降り立つことなんて、絶対あってはならない現象なのに。




それこそ神様自体が、罰則を設けているはずなのにどうしてそこまで寛大なのか疑問だった。



「神様猫、どうしてまた俺たちに干渉したがるんだ?」



僕が喉元から出てきそうだった、疑問をロロにぶつける。




「あぁ……助言しに来ただけだよ。有馬くんの命が危ないと言うか、危機が迫っているからね」




「危機……?」





「もうすぐ、本当の呪いが成熟して何の変哲もない「蛇」に姿を変えられてーーー」





ーーー記憶を消される。




またその言葉を聞いたのだが、胸を締め付けられるぐらいに気分が悪い。




僕は理央くんに、まだ全然幸せになってもらえてもないのにこの大地を去るなんてーーーー。


「考えたくない」



そう思ったし、そう呟いてた。




「それって………ヤバいな……俺達を幸せにするってミッションは?どうなるんだ?弟は………?」





「あぁ、それなら問題いらないよ。だって、もうすぐで達成できそうなくらいゲージは溜まってる」




「ゲージなんて、どこにも見えないよ?」




体の隅々まで探してみるも、全然。




「神様専用の鏡で、覗き見たんだよ。見えるわけない」




「なんじゃそりゃ………。っていうか、有馬はどうするんだ?俺達が幸せになっても………コイツこのままいれば、普通の蛇になっちまうんだろ?同仕様もないじゃねぇーか。天界に戻ったらどうなんだ?」



「それは無理だよね。有馬くん。君は元々「理央くんに恋をしたから降りてきたんだから」ーーーって、あ………」




「ちょっと!!どうして今それを言っちゃうの!?」




「俺のことが好きって………え!?!?」




暫くの自体に、状況が飲み込めない僕達三人。




そのたんかを切ったのは、理央くんでーーー。




「じゃあ……俺達が、変な出来事や不幸な目に遭っているのって、因果が結びついているのって………有馬!!お前なのか!!」




すごい剣幕をした理央くんが、僕の襟を掴む。




「グッ」




襟を掴まれて、首元が締まった故に変なうめき声が出た。



それはずっと、隠し通していた罪悪感や、やるせなさが、全て出たのかもしれない。




だけども、これは隠し通せるものでもないから、素直に頷くしかないわけでーー。




「ご………ごめんなさい。ロロが言っていることは、本当なんだ」




その瞬間、理央は手を挙げた。



だが既のところで手を下ろして僕を突き飛ばす。




「弟と俺と、母さんがどれだけ苦労して行きてきたのか、お前は知ってんのか?」





「…………」




僕は言葉が出なかった。



それは喪失にも似た、苦しみ。




「お前は、弟を変な事件に巻き込んで、危うく、「人を好きになったから」っていう理由で、周りを振り回してるの知ってんのかよ!!」




全くもって、言い返せない。



それは正しすぎる正論だったから。




「そんな自分勝手な野郎に、俺は好かれる義理もないーーだから」




その言葉を言われたくなかった。





「俺はお前のことが嫌いだ」




冷たいそよ風が僕たちを、それぞれの場所に変えるように言われてるぐらい、冷たかった。