1軍女子の顔が凍りつく。
無理もない。
「って事でーーー退学させるのなら、まずアイツからってことだな。敬斗は、巻き添え食らっただけだってことだ」
唖然とする周りだったが、拍手が鳴り響いたのも時間の問題。
「ほら。2人とも帰るぞ」
「………結局、敬斗くんはどうなるのさ?」
手を理央に引かれた矢先、有馬がそう呟いた。
「えっと……そうだね……。ーーー取り消しということになりますかね……」
「ちょっ!!?校長!!?そんな簡単に許してーーー?!?」
慌てふためく久山は、変な冷や汗をかいていた。
その後わかったのだが、あの1軍女子と久山は良からぬ接触があったため、学校を追い出された。
2人はグルになって企んでいたことがあったらしいが、俺の知ったことではない。
いや、ぶっちゃけた話知っていたことではあったのだがーーーあんな下民なんて眼中になかったから故に言及しなかったのだ。
もうあんな奴ら、興味なんてない。
さよならだ。
*
「どうして、助けたんだ?」
敬斗くんが、顔を顰めて問いかける。
あたりは薄暗く、グレープジュースをぶちまけたみたいに澄んだ空。
僕達三人は、下校中に車道の隅に寄せ歩いていた。
「………そもそも、僕達三人がどうして一緒に帰ることになってるのかが不思議だよね」
「ったく、二人ともうるせーな………」
舌打ちをされてしまった挙句、ため息とともに呆れが見てたとれた。
「だって……ずっと二人とも喧嘩しててーーー犬猿の仲状態だったのにどうして?」
「俺はーーー敬斗のことをみくびった罰として何もやらないわけにはいかないだろ?」
「………そんなのお前の勝手なお節介だ。そのまま潰してもよかったのに」
「俺は、やっぱり困っている人間を見捨てられないたちなんだよ。何故かはわかんねぇーけど……ほら……後味悪いだろ?弟にもその事で気を使わせたくないし………解決したい問題は、早めに解決しようとするたちで、悪かったな!!」
「そこまで卑屈にならなくても………僕に相談してくれれば、もっといい方法あったはずだよ?」
「例えば?お前に何かできんのか?言ってみろよ?」
「先生と一緒に、お茶でもして話を聞いてあげるとかーーー」
「………お前に聞いた、俺が馬鹿だった。何だ?お茶するってなんだよ?お茶をする環境が学校に備わってるわけねぇーだろ?」
「うぅ……うるさいな!!これでも頑張って考えてるんだよ!!理央くんの馬鹿!!」
すると、敬斗くんが吹き出した。
それも屈託のない笑顔だったから、ちょっと安心。
ーーーって、敬斗が笑った!?
「敬斗くんがーーー笑ってる!?」
「ずいぶん前から、笑顔は見せてたぞ?何いってんだ?有馬?」
「だって、いっつもすました顔をしていたからーーー人懐っこい顔をするんだね。敬斗くん!!」
「ーーー心の底から笑ったのは、今日ぐらいだがな」
「それでも凄いじゃん!!素直に笑うことができるって、よほど安心できる環境にいるって証拠だよ!!」
「まぁ、明日から学校に行くと、地獄が待っているかもな。敬斗、どんまい」
覚悟を決めた様な顔をしている敬斗くん。
だが表情は、どこか焦っているような気がして、気の毒だ。
彼をどうしてそこまで、不幸にさせてしまう人間が居たのか……僕には理由が分からない。
だけどーーー。
「敬斗くん。僕たちと一緒に、朝学校に一緒に登校しない?できれば毎日」
「なんでだ?」
「なんでって……もう、僕達友達でしょ?」
普通なら暫く相手の様子を見て、友達かどうかを決めるのが安全な道。
だけども、その様子を見るわけには行かないくらいに敬斗くんは今学校の立ち位置的に危ない状況にいる。
だからこそ、強引に「友達」という言葉を引き出して連れ込もうと心得ている場面もたたある。
「ーーーまぁ、俺もそうしたほうが居場所的には心地いいのかもしれないな………。学校を、休むわけには行かないし」
「んてことは、行くんだな?行くってことは、もう裏切るなよ?」
「一応神に誓ってやる」
「一応ってなんだよ!!真面目に誓えよ!!」
「まぁ、まぁ。そう言わずにね敬斗くんを迎い入れようよ」
すっかりこの日から、敬斗くんは笑顔を見せるようになり、僕自身も明るくなった気がする。
学校のみんなは、敬斗くんの事を警戒していたけれどーーー結局は1軍女子の悪事にみんな目がいってしまって忘れ去られたみたい。
でも……ひとりぼっちになってしまった敬斗くんを僕は見捨てない。
それはどうしてなのかも、よくわからない。
だけど、「困っている人を助けたい」って気持ちが強いから、突き動かされてるかもしれない。
かもだけどね。
*


