「ちょっと!!2人とも!!来てください!!大変です!!」
手を差し伸べ、理央くんを引いたとき。
駆け出してきたのであろう、真央ちゃん。
とりあえず物凄く焦ってる。
どうしたんだろう?
「敬斗くんが………退学になってしまうかもしれません!!」
「ざまぁみろだな」
「よ……よくないよ!!っていうか、どうして?!」
「それは……多分、前彼は私と同じ生徒会長候補で、学校を取り仕切る重要人物だったから。そんな人が煙草で、荒れてる人だって、外の人にバレたら……きっと、イメージが悪くなるって事を避けたいのかも………」
「アイツ……そもそも、何でそんなに荒れてんだ?どうしてそこまで、非道な真似をして、上に立ちたいっておもうなんて……」
「多分、過去の原因だったりするかもです………」
「真央ちゃん、何か知ってるの?」
「こういうの……あんまり言いたくないんですけど……彼、実はこの高校に来る前、一番の親友とトラブった事が原因でーー可笑しくなってるらしいんです」
「そのトラブルってのは?」
「えっと……これ、彼の事よく知りたかったから、色々調べたってあんまり口出ししないでくださいよ?その……敬斗くんは昔仲良くしていた親友がいたみたいなんですーーー」
敬斗くんは、中学校の頃まで親友と呼べる幼馴染と今の街とは違う街と暮らしていたみたい。
敬斗くんは、持ち前の頭の良さが秀でていて、トップクラスの成績を収めるくらい優秀。
だけど、親友の方は運悪かったみたいでどんどん落ちこぼれになっていった。
親友との格差を感じながら、毎日を過ごしていたけれど、親友はその現実の格差に耐えられず、敬斗くんを敵視するようになった。
「あいつはズルをして、俺を陥れたんだ」だったり、「俺よりアイツのほうが、女遊びが裏で激しい」なんて噂を流されるまで、関係が悪化。
「でも、そんな事してたら、親友のほうが人として信頼されなくなるだろ?」
「親友のほうが、顔が良かったみたいなんです。それで、周りを魅了して、支配するように歪んでしまったみたいです。その親友は、親との関係もよくなかったみたいでーー居場所がなかったんでしょうね……」
「クラスの皆はどうしたって言うの?誰も助けなかったの?」
「人間っていうのは、顔が良ければ何でも許してしまう甘い部分を持っているみたいなので……「ノリ」として受け止められてしまった部分はあって、周りから頭脳が秀でていた敬斗くんを「いじめ」るのは時間の問題だったみたいなんです」
「でも、そのいじめをバネにして、「もう二度と同じ過ちを繰り返さない」って、ならなかったのは、何でだ?」
「それだけ信用されていた人に、傷つけられたのなら立ち直りが上手くいかなかったのかもしれません。むしろ「自分の身は、自分で守る」って昇華して、「いじめる側」に回ったとも、考えられます」
僕達は、その後どう答えていいのか分からず数十秒固まった。
そりゃー、幼少期にずっと一緒だった人間に裏切られてしまった心の傷というのは、とても測り知れるものではない。
ずっと、信頼していた人間に手を切られる衝撃は、人を容易く心歪ませる魔力を持っている。
そんな過去を背負っていたなんて、僕は知らなかった。
「でも………どうすればよかったんだよ……」
「どうすればよかったって………どうゆうことなの?」
「そのまま、過去を穿り返して、俺が墓穴を掘るってのも変な話だし、悪事を働く事を肯定するわけにもいかなかった……それに、俺はアイツより立ち回りはそんなに上手いわけじゃない……。そんな早くから、アイツのこと、助けられるわけねぇーだろ……」
きっと、今理央くんは、自分を責めてるんだ。
自分のやった僕への対応や、弟への仕打ちを。
そして、敬斗くんを止められなかった罪悪感に心痛めてる。


