「それで、どんな御用なんだね?理央くん」



西陽にあたる剥げた頭が眩しい、夕日さす校長室。



俺は扉を叩いて、その場を訪れた。



職員室にも寄ったほうがいいかもしれないと感づいたのだが、なんだかそれも面倒だった。



だから直接足を運んで、ダイレクトに校長に告げたほうが効果が効くと思って。




「俺、写真を持ってきたんです」




「写真?どんなのだい?」




俺は指定された、写真を差し出した。



デジタルに切り替えてもよかったのだが、cgを疑われそうな気もした。



だからこそ、本場のカメラを使って撮影した労力を費やしたわけで。



校長はまじまじとこの写真を見て、驚く。




「煙草ってーーーあの敬斗くんがかい!?」



「僕が彼の後を追って、写真に収めたんです」




「……どうして……」



「最近、彼の様子がおかしかったからです」




それは、嘘だ。


八つ当たりかもしれない。



だけど、有馬の話を聞いてハッとした自分がいたからこんな事をしてると言っても、過言ではない。



ーーーアイツには、それくらいの鉄槌が必要なときもある。



悪に手を染めた友達を、助けるためにこんな事をしている自分。



でも、こんな自分を弟が見たらまたどんな事を言われるのだろうか。




やはり、やり過ぎだったり、人でなしというのかもしれない。




有馬も同じ事を言うだろう。



でも、アイツはそれくらいしないと、替えが利かない悪魔に近い。




いつからあんな事をするようになったのかは、理解しかねる。




だけど、出会った頃から敬斗はあんな性格だった。



「ここで、潰すぐらいじゃなければーーーアイツは改心しない」




「今、なにかいいました?」




ハッとして我に返る。




自分の心の内が見えていた。




「いいえ。何でもありません」




「これは、当分停学かもしれない……」




「そう……ですか」




「ありがとう。君が教えてくれたおかけで、我が校の生徒を、救えそうだよ」



俺は口黙る。



何かがおかしいと、直感的に感じるのだがどこが悪いのか分からないからだ。



「校長は……友達ってなんだか分かりますか?」




「友達……ねぇ」




校長も困ったように、顔をゆがませて口を開く。



「対等な立場で、話ができる人間かな」





「対等な立場でーーー」




「自分を偽ったりせず、ありのままの自分が、感じた事を話し合える関係で、壁がない友好関係といえるかな」




「それができたらーーどれだけ良かっただろう……」




「さっきから、どうしたんだーーーって、あれ?」





俺は校長の話を遮って、廊下を歩き出す。




外はジメジメとした曇り空で、土砂降りの雨が降っている。



今日は普通だったら、敬斗と一緒に帰って馬鹿話して日々を過ごすはずだった。


それを自ら俺は壊した。



何のために壊したのかと言うと、友達の為とも言えるが……自分の為とも言える。




ーーー俺は、いじめをして相手を正すって考えを持っていないっていう証明が欲しかっただけなのかもしれない。




ふとそんな事を思った。



だが、もう時は遅い。



アイツも容易く、許せる心の広さは持っていないだろう。



「さよならだな」



俺は学校を後にした。