「負けたくない」



昨日散々なことがあった翌日。



僕は深い眠りから起き上がったときに、浮かんだ感情を吐き出した。



昨日はあまりの辛さに逃げ出してしまった、自分を恥じたいって思ったのはいつぶりだろう。




天界にいた時よりかは、はっきりとそれを思い出せない。




「有馬くーん?大丈夫?昨日は急いで帰ってきたみたいだけど………体調はきつくない?」




心配してきてくれた、夏目さんが様子を見に来た。




無言で下の階に滑り込むようにして避けた、理央くんの様子を見て僕との関係を気づいてくれたみたいで……。




「うん。大丈夫だよ」




「それならよかった。今日は休む?体の不調が大きいみたいだし」




朝ご飯とは言えど、気遣ってくれたのか、お粥までだしてくれたことに、胸が苦しい。



「へいきだよ。気にしないで。学校には行くから」



「理央のことなんだけど………」




僕がお粥を地べたで座って、食べようとした矢先。



「あの人……あんまり素直になることに慣れてないの。喧嘩してしまったみたいだけど……大目に見てやってくれないかしら……?だめ?」




正直に言えば、理央くんの事を許せるかと言えばちょっと難しい。



だって、信じていた人に裏切られる衝撃って、そんなに早く立ち直れることはないから。



だけど、今だったらちょっとだけ理央くんの気持ちがわかってきた気がする。




大切だと思う人と、日々触れ合っていく中で、やっぱり戦わなければ守りきれないことだってあったから。




だからこそ、理解できないことから、安全を確保するために大切な物に鍵をかけて、遠ざけ守るーーーそんな考えもあるよなってひしひし感じるんだ。




僕に理央くんが強くあたったのは、僕が素直に秘密を教えなかったからだし、本心を隠してしまったから。




そういう事情もあったから、ぶつかったんだと思う。




僕にも、非があった。





だからこそ、理央くんを責めることはできない。



「ご馳走様でした」




「……え?食べるの早くない?」




数秒で、食事を済ませたあとだった。



僕はワイシャツに袖を通して、忘れ物がないか確認。




「よし……学校に行こう」




どうして、あんな酷いことがあったのに、学校に行けるのか?




それは理央くんを、無意識の内に傷つけていたことえの免罪符をもらいたいってのもある。




それともう一つがーーー「僕はもう一人の力で、この世界に立っているわけじゃない」。




そう感じたから。



クラスの皆に指摘されるほど、僕は自分の事しか考えていなかった。



責任を持ってに、行動することを「クラスメイト」に教えられ「理央くん」に気付かされることがあったからだ。




学校という場所は、人間関係を学ぶ所。




僕の足りない所があぶり出されて、課題になっている今、逃げることは許されない。





夏目さん、遥くん、そして、理央くん、白猫、僕の両親のためにもーーー。





「行ってきまーす!!」



僕は元気に、気持ちを切り替えて学校に足を向けた。




はじめの一歩を踏み出した矢先だった。



「………え?なんで?」




数メートル先にいたのはーーー理央くんだった。




「怒ってる?僕……やっぱりーー」


「怒ってるわけないだろ」




「じゃあ……なんで?」




「お前と話したいことがあるから。それじゃだめか?」



「いいや……だめじゃないけど……」




「それなら、良いだろ。行こう一緒に」




並んで歩く僕らは、何処となく気まずい。



何となく自分も悪いことをしていたくせに、ならどうしてあんな口調で断られたのかと頭に浮かぶあまり、モヤモヤする。



そんなわがままな感情に、理央くんが終止符を打った。



「俺……羨ましかったんだ」



「……羨ましかった……?」




「お前が直ぐに、遥と打ち解けているのみてなんだか悔しかったんだよ」




「どうして?」




「俺の弟、遥は最近やっとまともな世間話が出来るようになった関係だった」



「え………全然そんなふうには、見えないけど!?」


「あいつは、そういう事を言わないやつだし、俺も俺で、隠し通してきたからな」