「それで?準備できたのか?」



「今日からなんだよね?学校!!」



「早くご飯食べて、行くぞ。支度しろ」



昨日からのカミングアウトから、翌日たった朝。



大きなサンドイッチをほうばって、急いで牛乳を流し込む。



「そんなに焦らなくても、朝食は逃げないわよ。有馬くん」




「わかってるんですけどーーどうしても、楽しみで仕方なくってーーって、うわぁ!!」



階段を登ろうとした途端に、つまずいた。




既のところで、理央くんに抱きとめて床に全身を打ち付けることになることはなかった。



ほっとしたののも、束の間。



僕は理央くんから離れる。




心臓が飛び出るかと思った。




「ご……ごめんなさいっ!!こ……こんなことになるなんて、思っても見なかった!!」




「お前は、なんでそんなに動揺してるんだ?」



「理央って、な~んにもわかってないのね」




にこやかな顔をした、夏目さんの表情を見ると、こっちの良からぬ思惑が見透かされているみたいで辛い………。



「そんで、今日だけだからな。一緒に登校するの」



ワイシャツに腕を通し、一通りの教科書をバッグに詰めていた矢先。



「えー!!何でさ!!1日で覚えれるわけないのに!!」




めんどくさそうに対応してきた、理央くんの言葉に対して悲しみが湧く僕。




「せめて学校は、一緒に登校してくれないの?」



「何で一緒に行動してがるんだよ!!気持ち悪りぃーな!!」




「いいじゃないか!!もう家族だろう?」




「同じ家族でも、よほどのことがない限り一人で登校するもんなんだよ!!弟を見習え!!」




不意に遥くんの姿を捉える。




いつもは「おはよう」と、声をかけていた彼だったが、何処かさめざめとした様子で玄関の扉を開く遥くん。



あれ……?




何でそんなに、元気ないんだろう?



「ってーー遥くんと僕を一触担にして、本題から逸らさないでよ!!」





「我がまま言ってねぇーで、さっさと支度しろ!!」




教科書の角で頭を突かれ、痛みが走る。



「数学、忘れてる」



「理央くん……酷いよ……殴らなくても……」



悔しい気持ちになりながらも、渋々殴られた教科書を受け取りカバンに詰める。




「お前には、世間って奴を知ってもらうために、学校に連れて行くことを母さんと話したんだ」




眠たい目をこすりながら、肌寒い通学路を歩いていた僕ら。




「でも、何でいきなり夏目さんは学校に通わせようってなったんだろう?」




「何でそんな事気になるんだ?」




「だって、学校に通うってなると色々と手続きが必要だってきいたよ?それに、人間界で通学経験ないのにどうやって、理央くんがやってる高校に行けるようになったのか、とっても気になる………」




「その推測や情報……どこで手に入れてきたんだ?」




「近所の図書館だよ?人間界の事、僕もっと知りたいと思ったから、勉強してるんだ!!」




「高校に連れてきた意味ってのが、半分なくなったな……」




「どうゆう意味?というか、僕の質問に答えてくれはしないの?」





「ちょっと、答えづらいから今は無理」





どこかこわばった顔をしている理央くん。




なんだか嫌な予感と、とてつもなく大きな背景がありそう……。




ーーまさか……あの白猫が関わってる?





そんな疑問を振り払って、目の前を見た時には校門前。