「アイツ一体、何のために俺等の所に来たんだ?」
「お前の話は、何処か突拍子もないし、信じがたいがーー興味深い対象ではあるな、理央」
シャープな顔立ちからして、理数系が得意な月影に明らかに警戒された目線を向けられる。
それも、そのはずだろう。
天界がとか、蛇が人間に代わって恩返しに来たとか、ぶっ飛び要素が多すぎる故に、話についていけないのはわかる。
「んで、お前は結局どうしたいんだ?」
放課後の帰り道に寄り道と呈して、小学校から二メートル離れた電柱に身を隠す俺たち。
手には望遠鏡片手に覗き込むその姿は、まるで犯罪者に近い。
月影は息をするように、すました顔をして走る車を上から高みの見物をしている。
「俺は絶対に遥からあいつを離したいと思う」
「何故?」
「だって、あいつの話が本当だとして、冷静に考えたらストーカーと変わりないし……弟を、任せられるような肝っ玉を持っていてねぇ~気がする」
「それ今頃気付いた?」
「うるせぇ!!」
望遠鏡をつけて、必死に下校する小学生を血眼で眺める。
「これだけのために、早退するんだったら直接警告しとけば?「あいつと関わるなって」」
「それだと、アイツはゆう事をきいてくれないんだよ。息苦しい奴で、こうゆうときに頑固な父親とにてるんだから、ため息が出る」
「ため息が出そうなのは、こっちだがな」
「へぇ?なんか言ったか?」
「別に何も」
そうこうしていると、有馬と遥、そしてなんと漣ってやつも出てきた。
これは一体、どうゆうことだ?
俺はスクールバッグを漁って、トランシーバーを取り出す。
「それは何だ?」
「盗聴器だよ」
「何故、弟今までそれでイジメの件だって対処しなかったんだ?」
「うるせぇ!!うまい配分で調達できなかったんだよ!!」
トランシーバーの音を最大限に上げる。
ザラザラとした、雑音が耳を打ち一時の緊張を生み出した。
「お前、有馬っていうのか?」
「うん!!そうだよ!!」
「俺が怖くないのか?」
「だって、遥くんをイジメないで1週間は経っているから、きっといい人に生まれ変わったんだろうなーって思うから」
「お前って……案外チョロいやつ?」
「チョロいって?何かチョコの分類に入るお菓子?」
遥が吹き出した。
あんなに心の底から楽しそうな、遥は数年以上見たことがなかった。
ーー俺の前ではあんなに笑わないくせになんだよ………俺だって、世話焼いてるのに。
持っていたトランシーバーをバックの中にしまい、愕然と肩を落とす。
「落ち込んでるな?そこまで応えるか?」
「相当な」
「それなら、俺にいい案がある」
突然のうまい話につられてしまった俺。
「その有馬って奴を、世間を知らしめるんだよ」
暫く言っている意味が俺には、理解できなかった。


