「お母さんも?」


「そうよ。こう見えてちゃーんと、一族の償いを真面目に償ってきたのよー。大変だったけどねー」




「それが僕に回ってきてるってわけか………」




お母さんは、僕を優しく撫で「大人になったのね……有馬も」と抱きしめられた。




「じゃあさ……「禁忌図書館」の情報は「蛇族」が手に入れたも同然ってことだよね?」




ピクリとお母さんの撫でていた手が止まった。



「お父さんと出会ったのって………「禁忌図書館」の「愛の鍵」の力だったりするの?」




まだことときは、人間界で言うところの「性事」という事柄を知らなかった。




それは簡単に踏み込んでいい、聖域なる領域だってことも気が付かなかった子供に向けるお母さんの視線は何処か悲しそうだったのは覚えてる。



「残念かもしれないけど………そうね……私は「愛の鍵」を使って、絶対に手に入れてはいけない幸せを受け入れた。代償は、払ったけどね、こうして」



マスクの紐を引っ張り、顔の首筋から蛇の鱗が覗く。




「どうして……そんな事したの?」




「どうしても、手に入れたい幸せだったし、お父さんのことを愛していたから。本当に。心の底から」




「愛してたのは、分かるけど………人間界にそのまま住もうと思わなかったの?」