「んで?お前いいのか?お迎えに行かなくて?」


次の日部屋でのんびりしていたら、理央くんが帰ってきた。


夏目さんに頼まれていた、掃除をしている矢先だった。



「何勝手に掃除してんだよ!!」



「僕は、理央くん部屋を綺麗にしてただけだから、やましいことはしてない!!」

高校から帰ってきたのもあってか、昼過ぎ近い。

「……?今日はやけに早いね」


「試験真っ只中だからな」



「テストどうだった?」



「赤点確定」



ベッドにダイブして、仰向けに倒れる理央くん。



「いいの?」



「いいと思うか?」



「よくないと思う……」


「だから、今日は動く気力もないんだよ。ほっといてくれ」


反抗する気力もないのか、目を閉じる理央くん。



「僕、床で寝るのやっぱり応えるよ………一緒寝たらだめ?」



「何度も言わせるな、だめに決まってる。それともう、弟の所に早くいけ。行かなかったら、俺が行くぞ?」


「それはだめ。僕が引き受けたことだから、ちゃんと責任もつもん!!」


「なら出ていけよ。何度も言わせるんじゃねー」


それっきり、理央くんは寝息を立てて寝てしまった。



だけど無理矢理、毛嫌いしているわけでもなさそうだから多少は受け入れてくれたのかもしれない。


理由というのは、きっと遥くんが影響していると願って。



「それじゃあ行ってきます!!」



理央くんの学生服を借りて、いざ出陣。




照りつける太陽とは対照的な、冷気が僕を包んで震え上がる。



海から立ち上がった頃には、全然寒気なんて感じなかったのに、今頃五感が鋭くなった気がする。


「魔力が弱まってきてる証拠だったりする?」



考えても、堂々巡りだった故に全然答えなど現れるわけなかった。


「まぁ、別に遥くんと一緒に帰れるのなら僕は幸せだからいいか」




スキップしながら、指定された学校に向かう僕。



大の高校生がはしゃいでいるのを見かけた通行人は、少し驚いた顔をしてる。




だけだも、僕は気に留めることはなかった。



それは楽しい気持にとらわれていたから、周りなんて眼中にないのだ。




あの苦しそうな、遥くんの声が聞こえてくるまでは。