力無くベッドに眠りにつく爺さんに毛布をかけて、スヤスヤと寝息を立てたのを見守ったあと。




僕は扉を開け、ポストの中身を確認する。




風の噂でこの家の場所が近年バレてきたのか、攻撃的な手紙が流れ着く。



それは地獄宛からだったり、天界宛からだったりーー珍しいけれど人間界からくる手紙もあった。




どれも多種多様の罵詈雑言を浴びせるような、汚い言葉でこの家の場所を非難する内容ばかり。




最初は傷つきながら見ていたのだが、百年以上も経てば、その状況には慣れてしまって無心になって目を通すだけとなった。




目を通さなければならないのは、この手紙の中にこの森に住んでいる仲の良い近所の動物達の手紙が紛れ込んでいるから。




「………?これは……なんだろう?」




何百年と続く手紙開封の儀式が、ピタリと進行が止まる。



まず目についたのは、青色の肉球のスタンプで手紙の封が閉じられていた点だ。


人間界の言葉でいうと、シーリングスタンプというらしいがそれとはちょっと特殊。




普通のシーリングスタンプは、固くて薄いくて火を通すとスライムのようにドロドロになって軟体化する。




だけどもこの手紙の封を閉じているものは、触れた瞬間がとても柔らかいのだ。



普通のシーリングスタンプは、薄くて硬いけれどすぐに力を入れると、「パキッ」と折れて欠けてしまう。