僕が倒れているのを発見したのはマルリス婆さん。
爺さんの奥さんで、これまた足元にも及ばないぐらいに小さなリスだ。
動けない僕を見かねてか、家から毛布と食べ物を持ってきてしばらく看病したあと、マリス爺さんがあとからやってきた。
やっと動けるようになるくらいに、体力が回復した頃だった。
マリス爺さんが「暫く、大きくなるまでわしの家に住みなさい」と許しを得てくれたんだ。
リスの家だから、小さいはずだと困惑はした。
だけど、ここは暗闇が潜む森の中。
虎だって、ライオンだって、荒々しい神話の動物が棲む恐ろしい森ーー。
ずっと危険が潜む外に出ているようなものだから、家に少しでも近い場所がいいだろうと安易な考えで、ついていった。
するとどうだろうーーーそこは四人家族が住めるくらいの大きな切り株の中。
そこが家だったのだ。
綺麗にコーティングされているニスの匂いが、ほのかに香る。
「ここって本当に、君たちが暮らしている場所なの?」
僕は疑問に思って、総二人に尋ねた。
二人は笑顔になって、婆さんが答えた。
「すごいでしょー。ここは先祖代々リス族が百年かけて作った、新居なのよ。大切に過ごすために、毎年ニス塗りはかかせないの」
隅々までいきわたる、杏色をした壁時計、椅子、机ーーー全てが飴でできているように艷やかだった。


