悔しさと、無力さと、苦しさが混ざって立ち尽くすしか無かった僕。
「有馬、お前は何も心配するな」
口数が少なくなった、僕を見かねたお父さんが肩の傷口を押さえながら笑った。
「お前は何も悪くない。すべての責任は妻と私にある」
絶対に日本刀では勝ち目がないであろうと、断言できるほどボロボロになった刃物をまた上級天使に向ける。
「私達は望んであなたを生んだし、私達はこうなる事を前々から覚悟はしてたのよ。だから、下界に住まないのはいろんな理由があるのよ。あなたのせいじゃない」
その言葉はきっと嘘だ。
僕を悲しませまいと、懸命についた思いやりなのだろう。
「お前ら……禁忌図書館の情報を私利私欲で満たし悪用した容疑で、処刑する!!覚悟しろ!!」
ギラギラと光る針のような長い剣先に変化したかと思えば、上級天使は横に剣を凪いだ。
視界が真っ白になった。
体が奈落の底へ、落ちてゆく感覚が僕を覆う。
ただ一瞬見えたのはお父さんとお母さんがぼくの目の前に立ちはだかり、覆いかぶさって庇ってくれたのは見えた。
ただ焼けるような鉄の匂いからして、致死量の血を失ったとは思う。
くるくる回る鍵と同様に、僕は意識を失って天界から少し離れた、暗い森に落ちる事になる。
これからは一人で生きていく事に、なってしまうのはとっても嫌だ。
だって……僕は、まだ小学校にも上がっていないのにどうやって親なしで生きていけばいいって言うのか……。
草木を背に、放り投げられた鍵を見つめた。
鍵からやっと抜け出せたのだ。
「もう……だめだ………」
それから暫く意識を失って眠りについた。


