「今日も、お馴染みの密会(・・)だね」
「密会て……」



 教卓に頬杖をついた晴音は、いつもの調子で僕をいじってくる。




 静かな教室に、二人きり。

 半年以上経てば妙な背徳感も薄れるかと思いきや、どうやら僕の考察は外れていたらしい。



 一日一日、毎放課後が、ドキドキの連続だった。




「結局颯くん、私のこと、どうだったの?」




 ふと、尋ねてきた君。





 今だから、無性に気になる。


 君があのとき、どんな気持ちで僕に笑いかけていたのか。

 どんな気持ちで、教卓に寄りかかっていたのか。




「好きだし、なんなら世界一可愛いと思ってるけど」
「あら嬉しい」




 恥じらいをかなぐり捨てて放った本音混じりの言葉に、おどけてみせた君。


 だけど、夕日で誤魔化せないくらい耳が赤く染まっていたこと、僕は見逃してはなかったよ。





 休日の、私服姿はやっぱり可愛いかった。
 平日の、制服姿の晴音も十分すぎるほど可愛かった。



 けれど、僕はもう(・・・・)片方の晴音を(・・・・・・)見ることが(・・・・・)できなくなって(・・・・・・・)しまったんだ(・・・・・・)





「案外颯、私に惚れちゃってるもんね」
「こら、調子に乗らないの」





 ――その日をさかいに、晴音は学校に来なくなった。