人生で初めて誰かに告白されたのは、普段と変わらない、なんてことのなかった日の放課後。


 すごく、不純だった。お互いに。
 今更ながらに、そう思う。








「成松くん。好きです」



 二人きりの教室に、融けていくように響いた彼女の声。



 別に、さして接点があるわけでもない。

 なのに、なぜか、彼女の告白には熱があった。




「……突然、だね」
「うん」



 ぎこちなく話をそらす。

 それをわかっているのかいないのか、彼女はオレンジ色に染まりだした窓の外に目をやった。




「――協力、してほしい」
「協力?」




 パッと目を惹く顔立ち。
 花が舞うような柔らかな笑顔。


 華奢な体。




 この時、この瞬間から、すでに彼女の時計(タイムリミット)は刻々と進んでいたのだろうか。





 僕らは、互いを利用したかった。

 利害が一致した。ただ、それだけ。






「私に、五万回のありがとうを言わせて」





 果たして、それだけ、だっただろうか。