「この頃、会えないね」
ヨウコが、言った。
「そうだね」
タカシが、返した。
「今から会えない?」
「もう、こんな時間よ」
「そうか・・・じゃぁ・・・いつもの橋で会おうよ」
「だから、もうこんな時間なんだって・・・」
「違うよ。夢の中で・・・」
タカシはそう言って、電話を切った。
「待った?」
「今日は早いわね」
「もう、ここは僕たちの夢の中だからね」
「そうなの?」
「そうだよ。だから遅刻はしないんだ。ハハハ・・・」
「そっか・・・じゃぁ・・・これからどうするの?」
「そうだな。あ、そうだ。こっちに来て」
タカシは、ヨウコの手を取った。
「どこへ行くの?」
「いいから」
二人は、橋の上を走り出した。
「さあ、僕の手を握って」
「えっ・・・」
「いいから」
タカシは、ヨウコの手を掴んだ。
するとどうだろう。二人は宙に浮いた。
「行くよ。ヨウコ」
二人は、空高く舞い上がった。
「わーーーーーーー!!!」
「あれを見てごらん」
「何?」
「ほら、あれだよ」
それは、大きな大きな満月だった。
「すごい・・・・・・」
ヨウコが、呟いた。
「奇麗だね」
タカシが、言った。
「ほんとに、奇麗」
「さぁ、今度はこっちだ」
タカシは、もう一度ヨウコの手をぎゅっと握りしめた。
「ほら、もうすぐ・・・・・・」
タカシが、そう言った直後、満天の星の夜空に花火が上がった。
「・・・・・・」
ヨウコは、言葉を失った。
花火は、色とりどりで、夜空を虹色に変えていた。
「次はこっちだ」
また、タカシはヨウコの手を握った。
二人は高速で、夜空を飛んでいる。
そして、トンネルが見えてきた。
「さあ、行くよ」
タカシが、言った。
二人は、トンネルの中に突っ込んで行った。
暗い。
真っ暗だ。
「怖いよ。タカシ」
「・・・・・・」
何も言わないタカシ。
「ほんと、怖いよ。もう戻ろうよ」
ヨウコが、言った。
「・・・・・・」
それでもタカシは、黙っている。
「タカシ!」
「ほら、もうすぐだ」
「えっ・・・・・・」
光が、見えてきた。
そして、二人はトンネルから出た。
「わーーーーーーー!!!!!!」
そこは、広大なお花畑の世界だった。
「すごい・・・・・・」
ヨウコが、呟いた。
「ヨウコ」
「なに?」
「結婚してくれますか?」
「えっ・・・・・・」
花々が、二人を祝福しているかのようだった。