ちょっと距離があるここからでも、樹くんは樹くん、楓くんは楓くんらしい。
集まってきたひとたちから次から次へと質問を浴びせかけられているのに、おたがいになりきっている。この分なら、ふたりの中身が入れかわっているなんて、みんな夢にも思わないだろうな。
さすが、ふたごのきょうだい。わたし、心配しすぎだったかもね……。
「理子ちゃん、あたしはもう教室に行くけど、理子ちゃんはどうする? 野々村くんたちを待ってる?」
「んー、そうだなあ。同じクラスの子がいるから、わたしのやることなんて特にないと思うし……」
本当なら、それそれ、ふたりの教室までついていくつもりだった。だけど、この様子なら、わたしがいっしょにいなくても、だいじょうぶっぽいね。
そう判断をくだしたわたしは、優雨ちゃんと教室に行くことにした。
「まいっか。待っていたら遅刻しそう。優雨ちゃん、先に行こうよ」
優雨ちゃんと校舎の中に入っていく。
それに、ふたりがあまりにもうまくやっていたから、このときのわたしはすっかり安心していたんだ。
あとから、大変な問題が起きることを知らずに――――。