樹くんが加勢してくれたので、楓くんは「勝手にしろ」と小声で言ったあと、
「じゃあ、アニキが先頭に立つんだな?」
と確認してきた。
「ああ、おまえは車道側だ。理子にあわせて歩くんだ」
「言われなくたってそうするって」
樹くんも楓くんも目と目をあわせて、まるで、おたがいの考えを探りあっているみたい。
ふたりを取りまく空気がピリピリとしているような気がしたんだ。
こんな些細なことで……?
ううん、そうじゃない。ふたりにとっては大変なことだ。
自分が自分じゃないだもん。
自分としてふるまえないんだもん。
すごく、きゅうくつな思いをするだろうな。
だから、少しでも……。
わたしはふたりにニコッと笑いかけた。
「楓くん、いつもどおり楓くんが先頭を歩いて。わたしの考えすぎってこともあるし。できるだけ無理するのはやめようよ」
ふたりは同時にわたしを見た。
