えーと、言っておくことはもうなかったかな?
忘れものがないか考えをめぐらせていたら。
「……理子、おまえ、おれにケンカ売ってんのか? さりげなく悪口をはさんできて」
楓くんが、じとっとした目でわたしをにらんでいる!
ギクッ。
「あ、えっと、そういうつもりじゃ……ないんだけど……そう聞こえた?」
わたしはあからさまにうろたえて、それを声に乗せてしまう。
「おう、聞こえた」
キッパリと肯定した楓くん。
「ご、ゴメン……」
わたしは、指をもじもじさせながらあやまった。
「せめて、どっちかと同じクラスだったらよかったな。こんなにやきもきしないで済むのに……」
はあー、と長いため息もでてしまう。
すると、樹くんがやさしくほほ笑んだ。
「なるようにしかならないんだから、アレコレ考えたってしかたないよ。理子が僕たちの心配をしてくれるのはうれしいけどね」
