あっ、いけない! うれしがっている場合じゃないや。

 今日から入れかわり生活が本格的にスタートするんだ。

 口角をあげて、にやけそうになった頬を引きしめる。

「おっ、おはよう!」

 わたしは通路にでてドアを閉めた。

「遅いってことないよ。いつもより三十分はやく起きたし」

 文句を言いながら、ふたりをふり返る。

「それより、ねっ、わかってる? 今日からは学校でも樹くんは楓くん、楓くんは樹くんなんだよ。まちがえないでね」

「だいじょうぶだよ、理子。楓のクラスもサッカー部もバッチリ予習してあるから」

 樹くんの返事は頼もしいものだった。

「うん、樹くんはあまり心配していないよ。問題なのは……」

 ちらり、楓くんへと目を動かす。

「なんだよ、おれだってか?」

 楓くんは不服そうに口をとがらせた。

「ほら、言ってるそばからコレだもん。樹くんは、すぐに怒ったりしないよ」