ドキッと大きく鼓動がはねた。
今そんな話を持ちだすなんて! かああっと頭に血がのぼった。
反論しようと口をひらいたけれど、
「なっ、なっ、かっ、楓、くん……!」
意味になってない言葉しかでてこない!
「ったく、めんどうだよなー」
えっ。
冷たい水を頭から浴びたような気がした。
そのとき、
「ふざけるな」
樹くんが楓くんをにらむ。
たがいの視線を結んだふたり。
先に結び目をほどいたのは、楓くんの方だった。
「おっと! こえー。これも冗談だって。そう怒るなよ」
楓くんは茶化しながら立ちあがる。そうして、またひとつニヤッと笑った。
「おじゃま虫は、これで退散!」
まだ話の途中なのに、わたしと樹くんを残して、勝手に部屋を出ていってしまった。
わたしはパタンと閉じられたドアを見つめることしかできなかった。
「理子、気にしないでいい」