この声は……楓くんだ。中身は樹くんだけれども。
部屋のドアをあけてみると、ベッドの上に腰をかけてくつろぐ樹くんと楓くんがいた。
「あーあ。やっぱいいよなあ、自分の部屋はー」
樹くんがベッドの具合を確認するように、ポフッとおしりを弾ませた。
「でも今日からは僕の部屋だよ、楓。まちがえないように気をつけないと」
楓くんが樹くんの肩をたたく。
「んなもん、わかってるって! 何度もしつこい、つーの」
樹くんは不満げに文句を言った。
なんだか夢を見ているみたい。
自分の記憶がふわっとして、どこか頼りなげに思えた。
しっかりして、理子。
今は樹くんが楓くんで、楓くんが樹くんなんだよ。
明日からの学校生活、だいじょうぶかな。
わたし、ちゃんとフォローできるかな。
ふたりとはクラスがちがうから、不安しかないよ……。