「そもそも、どうして階段から落ちたの? 何があったの? 教えてくれるまでは、ここから一歩も動かないんだから! わたしだけ何も知らないなんてイヤだよ」

 必死に訴えたら、樹くんは笑みを消した。

「……ゴメン、理子。それだけは言えない。僕と楓、男どうしの話だから」

 胸がズキッとした。

 ふたりを失ったと思ったときの、悲しい気持ちがよみがえってくる。

「なんで……? わたしが女の子だから……? 男の子じゃないから言えないの?」

「理由は、いつか話すよ。僕たちのからだが元に戻れたときにね。それまではデートもおあずけだね。ゴメン、理子」

 樹くんは、またあやまった。

 あたたかい笑顔とやさしい声。

 姿は楓くんでも、樹くんは樹くんだ。

 なのに、わたしったらワガママばっかりだ。

 樹くんを困らせて、あやまらせてばかりいるね……。

 わたしは樹くんのうでを離した。