キスをされそうだったことにもおどろいたけど、それ以上におどろいたのは、樹くんがまるで別人のようだったことだ。
低い笑い声が病室にひびく。
「はあー、ミスった!」
ベッドの上で身をよじらせて笑いつづける樹くん。
うそ、どうなっているの?
例えようもない、妙な胸騒ぎがして。
わたしは、これ以上何も言えなくなってしまった。
やがて樹くんは笑うのをやめて、身を起こした。
「もしこのままキスしていたら、この場合、おれと樹、どっちとキスしたことになるんだろうな? なあ、理子」
ニヤッと意地悪な笑みを浮かべる。
そして、衝撃的な言葉を口にした。
「おれは楓。アニキと中身が入れかわったんだよ」
