「あの子また、野々村くんたちといっしょに歩いてる。何様だろ、自分のカバン持たせて」
「幼なじみってだけで、仲よくしてもらえていいねー」
「本当! たいしたことないのにね」
うわー、耳が痛いよー!
わたしまで目立ってしょうがない。
まるでパンダかコアラになったみたい……。
とくに彼女たちは熱烈なファンなんだろうな。
運が悪かったと思って、あきらめるしかなかった。
「理子……」
樹くんの耳にも彼女たちの声が届いたみたい。心配そうにわたしを見る。
いけない!
暗い顔をしていたら、樹くんによけいな心配をかけちゃう。
スマイル、スマイル!
「だいじょうぶ、元気だよ」の合図のつもりで、わたしがニコッと笑みをつくったときだ。
「だれだ! いま何か言ったヤツ!」
わたしたちの前を歩いていた楓くんが、いきなり怒ってふり向いたんだ。
「かっ、楓くん!?」
思わず飛びあがったとたん。
女の子たちの騒ぎ声も一オクターブ高くなって、ますます大きくなった。
「きゃっ、楓くんが怒った!」
「怒った顔もステキ!」
「樹くんも怒って~!」
