けど、放ってしまった言葉は、もうなかったことにできない。
わたしは急いで口を動かした。
「かっ、楓くん……! 楓くんが……」
なぜだか樹くんの肩がビクッとふるえた。
薄茶色の瞳が、大きく見ひらかれる。
「楓……?」
信じられない、って言いたげな表情だった。
「……うん。告白されたとき、楓くんの顔が浮かんだの。それでわたし、本当にいいのかなって思っちゃって、すぐ返事ができなかったんだ」
沈黙が流れる。
たっぷり五秒はたったあと、樹くんは口をひらいた。
「ひょっとして、楓が好きだって言いたいのか……?」
樹くんの口調が変わった。
そのとげとげしい言葉とはうらはらな、切なそうな瞳にドキッとしてしまう。
「え、えっと、あのね」
恥ずかしくて、とっさにうつむいた。
自分でも何が言いたいのか、説明になってない。
もう、ボロボロだ。
