花びんに水を入れて病室の前のろうかに戻ったら、病院のスタッフさんがせわしなく行き来する姿が見えた。樹くんと楓くん、両方の病室の雰囲気がおかしい。
ウソ、まさか。
緊張が走ったとたん、全身が凍りついたように動けなくなった。
わるい想像が次々、頭に浮かんでくる。
今すぐにでもふたりのもとへ飛んでいって、この目で確かめたい。
けれど、こわくて足が一ミリも動かない。
どうしよう、どうしよう。
花びんをギュッと胸に抱きしめたまま、ボーゼンと立ちつくしていたときだ。美代子おばさんが樹くんの病室から出てくる。
「理子ちゃん……」
おばさんがわたしの顔を見て涙ぐんだ。
「意識が戻ったの、ふたりとも。目を覚ましたのよ……!」
――――え?
「おばさん、ホント? ふたりとも?」
聞きまちがいかと思った。
でも、聞きまちがいじゃなかった。