今日も学校が終わったとたん、いちばんに教室を飛びだして病院に向かった。
けれども出迎えてくれるのは、すっかりやつれてしまった美代子おばさんだけ。
おばさんは花びんを抱えて、樹くんの病室から出てきたところだった。
「おばさん……」
「ごめんね、理子ちゃん」
美代子おばさんは、悲しそうに目を伏せた。
それだけでわかった。
今日もふたりは眠っている。
もし、おとぎ話のように、くちびるにキスしたら目覚めるって言うなら、それを実行したってかまわない。ふたりのためなら、なんだってできる。
「いいえ、わたしはだいじょうぶです。あ、花びんの水くみですか?」
「ええ、そうなの。なんだか病室が殺風景だから、さっきお花を買ってきたのよ」
大好きなお花の話をしているからだろうな。おばさんの表情が少し明るくなった。
