優雨ちゃんと恋愛マンガやドラマの話をするのも好き。

 恋バナを聞くのも好き。

「こんなロマンチックな恋ができたらいいな」って、理想もちゃんとある。

 だけど、いきなりキスされそうになったとき、こわいって思ってしまったんだ。

 まったく心がついていかなかった。

 ひどいよ、楓くん。

 わたしのこと好きでもないのに、キスしようとするなんて。

 こんなの、ロマンチックから遠すぎるよ。

 もう、忘れてしまいたい……。

 まぶたをギュッと閉じたら、目にたまっていた涙がスーッと流れ落ちた。



      *



 それから、どのくらい時間がたったんだろう。

 いつのまにか眠っていたらしい。薄く目をあけると、部屋が薄暗かった。

 もう夕方だ。太陽が沈みかけている。わたしの涙も乾いていた。

 のろのろと起きあがり、スマートフォンを持ってリビングへ行く。